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岐阜地方裁判所 昭和54年(行ウ)10号 判決

原告 土本森重 外五名

被告 岐阜県知事

主文

一  原告らの本件訴えを却下する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告ら

1  被告が昭和五四年九月一七日にした土岐口土地区画整理組合の事業計画変更認可処分は、これを取り消す。

2  訴訟費用は、被告の負担とする。

二  被告

1  (本案前の裁判)

主文と同旨

2  (本案の裁判)

原告らの本訴請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  当事者

原告らは、土岐市土岐津町大字土岐口字上流地内ほか約四三万四〇〇〇平方メートルを施行地区として土地区画整理法(以下、単に「法」という。)に基づく土地区画整理事業(以下、単に「本件事業」という。)を行うため昭和四六年一月一六日に設立認可を受けた土岐口土地区画整理組合(以下、単に「組合」という。)の組合員であり、被告は、組合の事業計画変更について認可権を有する者である。

2  土岐市による下水道終末処理場建設計画と本件事業計画の推移

(一) 組合は、昭和四六年一月二七日に開催せられた設立総会において、昭和四九年一二月三一日の完工を目途として金四億七〇〇万円の資金計画をもつて本件事業を実施することを決議した。爾来、組合は、右設立に際して定められた事業計画に基づき、換地の実施、街路・公園・排水設備等の公共施設の整備、改善をすすめ、昭和四八年一月には、全施行地区についてその仮換地の指定を完了した。しかして、右施工地区のうちの字宮前及び字藤四郎地内約五万二〇〇〇平方メートルの地域(別紙添付図面赤斜線部分。以下、単に「本件地区」という。)については、同図面記載のように区画割りされた宅地と道路、公園用地が指定され、以後、右の指定に従つてこれら仮換地の使用、収益が行われてきた。そして、昭和五二年三月八日開催の総代会において、本件地区を含むいわゆる第三工区につき、右計画に則つた区画街路工事を同年四月一日に着工する(なお、その完成予定日を同年一二月三一日とする。)ことが承認・決定され、かつ、これに要する工事費を計上した組合の昭和五三年度予算案が可決・承認された。

(二) ところが、訴外土岐市は、右のように、昭和四六年一月末以降、本件地区内における組合の区画整理事業が着実に進展していたのにもかかわらず、昭和四八年二月、本件地区に下水道終末処理場を建設することを決定し、同年一〇月、被告に対して右処理場建設について都市計画法に基づく事業認可方の申請をした。そして、土岐市は、右処理場建設に先行して現に実施されつつある組合の区画整理事業との相互調整がすでについている旨虚偽の報告をするなどして、同四九年三月、被告から右事業についての認可を得、同五一年八月ころから、すでに指定ずみの仮換地に対する買収工作を行うようになつた。

(三) これに対して、組合は、土岐市の樹立をした右下水道終末処理場の建設計画に追従・加担し、本件事業の全施行地区の内、本件地区を含むいわゆる第三工区を除くその余の地区(いわゆる第一、第二工区)については、昭和五〇年一月時点ですでに事業のほとんどが完了していたのにもかかわらず、いわゆる第三工区については、前記総代会の決定を無視して、同工区における本件事業の着工を遷延したまま、本件事業の施行期間を昭和五五年三月三一日まで延長することなどを決定した。この間、組合は、速やかに第三工区の工事を着工されたい旨の原告らを含む組合員の要請に対して、当初の事業計画どおりの工事を最終的には必ず施行する旨の回答を続けてきた。

3  本件決議の成立

(一) 以上のような状況のなかで、組合は、昭和五三年一二月四日、第六回総代会を招集し、突如として第二一号議案をもつて、本件地区における事業計画の変更を提案した。右議案の内容の概要は、本件地区における前記事業計画のうち、街路及び排水路に関する部分を廃止するとともに、公園の位置を本件地区中央部分から南東隅に移動して、本件地区全体を広大な一区画の宅地に変更するというもので、組合は、右変更の目的を、「土岐市が本件地区に建設する公益施設の機能・作用等に支障をきたさないため」と説明した。

(二) 右議案の審議に当たり、組合の理事者らは、出席総代から右「公益施設」の具体的名称・内容について質問されたのに対し、終始その点についての説明を回避し、下水道終末処理場建設の便宜のためではないかとの質問に対してさえ、その確認を拒んだ。のみならず、前記総代会では、右「公益施設」がこれに隣接する公園及び周辺の土地利用に与える影響についてすら、ついにこれが明らかにされず、また、前示のような事業変更に直接利害関係を有することとなる原告ら第三工区の組合員に対して右事業計画の変更に関する十分な説明の機会が保障されるべきである、との出席総代らの意見も無視されて、専ら右事業計画の変更による本件事業の早期終結こそが優先する、との立場に立脚した強引かつ一方的な議事進行が行われ、その結果、僅か二時間の審議時間を経たのち、賛成一九名、反対六名、白票一名の多数決をもつて、右事業計画の変更原案を可決・承認する旨の決議が成立した(以下、右決議を、単に「本件決議」という。)。

4  本件決議の無効

しかしながら、本件決議は、以下の理由により無効であることが明らかである。

(一) 第二一号議案提出の違法性

第二一号議案は、原告は組合員に対する関係においては背任行為を構成するような違法な内容の議案である。すなわち、本件地区は、当初の事業計画によれば、道路が整備され、公園も建設された近代的な住宅地となるべきことが計画されており、原告ら組合員もまた、右事業計画どおりに事業が実施されるものと信じて、減歩その他の負担にも応ずるなどして、本件事業に協力してきたのである。ところが、組合は、一方では原告ら組合員に対して右事業計画の実施を確約しながら、他方では首肯しうべき何らの理由もないのにもかかわらず、約二年間に亘り該計画に浴う工事を実施しないまま事態を放置、遷延し、あまつさえ、本件事業の最終段階に至つて、仮換地後に本件地区を買い占めた一所有者にすぎない土岐市の便宜のために本件地区内のすべての道路建設計画を廃業し、かつ、公園を従前予定地以外の他の場所へ移設しようと計つて、右の第二一号議案を提出したのである。そもそも、道路、公園は、すべての組合員にとつて不可欠ともいうべき重要な公共施設であるから、土岐市が入手した土地を同市の有利に使用させるという観点から、公園予定地を移動させたり、道路建設計画を廃棄したりするというようなことは、その性質上とうてい許されないものである。しかるに、組合の理事長が同時に前記下水道終末処理場建設の主体である土岐市市長の地位にあることなどの関係上、組合は、あえて組合員全体の利益をじゆうりんして、専らその一組合員にすぎない土岐市の利益を計るために、本件事業全体を歪曲するという暴挙にいでたのである。このように、前記第二一号議案は、その内容が、原告ら組合員に対する関係において背任行為を構成するような違法な内容の議案であるから、かくのごとき違法な議案をそのまま可決成立させた本件決議は、当然に無効であるといわねばならない。

(二) 本件決議内容の不十分性

本件決議は、本件地区における当初の事業計画を根本的に変更することをその内容とするものであつて、これがきわめて重大なものであることは多言を要しない。しかるに、本件決議に当たつては、該決議の対象である前記二一号議案の提出目的、その趣旨等が全く明らかにされなかつたばかりでなく、当初の事業計画の変更に伴つて当然に問題となるべき仮換地計画の変更、保留地の範囲・規模及びその処分計画、その他組合の財政収支に及ぼす右決議の影響等について、本件決議は全く言及するところがないのである。かくのごとく原告ら組合員にとつて深刻かつ重大な利害関係のある以上の諸点を全く明らかにしないまま行われた本件決議は、その内容が不確定・不十分であるという非難をとうてい免れ得ないものというべく、この点からも、本件決議が無効であることは明らかである。

(三) 本件決議の目的の違法性

本件決議の専らの目的が、土岐市をして前記下水道終末処理場を建設することを可能ならしめるにあることは明らかである。ところで、下水道終末処理場は、ごみ焼却場や火葬場等とともに、一般に嫌忌施設と称されるものであつて、これが健全な市街地の造成を図ることを目的とする法の予定している「公共施設」に該当しないものであることもまた疑を容れない。したがつて、土地区画整理事業施行区内にこのような施設を建設することが同事業の目的に背反することは明らかであつて、組合が自らこのような施設を建設することは勿論、組合員がこのような施設を建設することもまた法の許容しないところというべく、組合としては、なんぴとがその建設主体であつても、万難を排してかかる施設の建設を積極的に阻止、抑制すべき責務を負うものと解すべきである。しかるに、組合は、環境上重大な問題を包含する右下水道終末処理場の建設計画に追従・加担し、専らこれを実現させる目的で本件決議を成立させたのであるから、かような本件決議が、健全な市街地の造成を目的とする本件事業の趣旨・目的に反するもので、これが無効であることは明らかといわねばならない。

(四) 本件決議方法の違法性

本件地区の面積は、本件事業施行地区全体のそれの約一〇パーセント強を占め、またいわゆる第三工区のそれの約五〇パーセントを占めるものであるところ、本件決議は、本件地区における当初の事業計画を根底から変更し、本件地区に関する限り、その街路、排水路の整備、宅地区画割等およそ本件事業の根幹ともいうべき諸事業を全面的に中止又は廃棄することをその目的・内容とするものである。そうとすれば、本件決議は、実質的には、組合の定款に定める施行地区を変更する事項に関するものというべく、したがつて、本件決議の対象事項が元来は総会の議決事項に該当するものであることもまた法三六条三項二号、第三四条、同法施行令二条二項の趣旨等に徴してきわめて明らかであるから、これを総代会の議決によつてした本件決議は、この点においても、とうてい無効の評価を免れない。

(五) 第二一号議案の審議の違法性

第二一号議案の審議に当たり、組合は、僅か二時間という短時間を費やしたのみで、本件決議の目的、内容、効果など、きわめて重要な問題を包含するあらゆる質疑に対して明確な説明を避けたまま、ひたすら「本件事業の早期終結のため」などと強弁して、右議案の採決を強行し、結局、本件決議を成立させた。特に、原告らいわゆる第三工区の組合員に対する関係では、本件決議に基づく事業計画の変更がその利害に直接の影響を及ぼすものであることは明らかであるから、組合は、右事業計画の変更が第三工区の事業全体に及ぼす影響について、同工区内組合員らとの間に説明会を設けるなどして、これを周知、徹底するのは勿論、予め原告ら第三工区内の組合員からその意見を徴したうえで、右第二一号議案の内容につき十分な審議を尽くすべきであつた。しかるに、組合は、これら民主的手続を全く欠いたまま、形式的な多数決によつて、本件決議を成立せしめたのであるから、右第二一号議案の審議に関する全過程を実質的に総合考量すると、ひつきよう、組合は、多数決原理の濫用によつて本件決議を成立させたものという評価を免れることができず、本件決議は、この点においても、違法・無効というを妨げない。

5  (事業変更認可の違法性)

以上に詳述したように、本件決議が違法・無効であることは明らかであるにもかかわらず、組合は、被告に対して、本件決議が適法・有効に成立したことを前提として、右決議の内容となつた事業計画の変更認可を申請した。そこで、原告らは、被告に対し、昭和五四年八月一六日、右事業計画変更に関する意見書を提出し、これによつて本件決議の違法性と右事業計画の変更を認可すべきでない所以を明らかにしたが、被告は、これを採択せず、昭和五四年九月一七日、本来は違法・無効な本件決議に基づく事業計画の変更を認可した。

6  よつて、原告らは、被告がした右の事業計画変更認可処分の取消しを求める。

二  被告の本案前の主張と請求原因に対する認否

(本案前の主張)

原告らの本件訴えの趣旨は、「被告が昭和五四年九月一七日にした本件事業計画変更に関する認可処分は取り消す。」旨の判決を求めるというのであるが、右訴えは、その趣旨自体に徴して、争訟の成熟性ないし具体的事件性を欠くことが明らかであり、本件について、原告らにはいまだ抗告訴訟を提起するに足りる訴えの利益を認め難く、結局、原告らの本件訴えは、とうてい却下を免れないものというべきである。

すなわち、事業計画それ自体は、土地区画整理事業のいわば青写真であり、その施行区域内の不特定多数の者に対して、一般的抽象的な整理事業のプランを示したものにすぎない。したがつて、事業計画変更に関する被告の認可処分があつたからといつて、そのことによつて、直ちに特定の個人の権利に対し直接に変動を及ぼすような効果のないことは明らかである。しかも、被告がした本件事業計画の認可は、行政的な監督権を有する被告とこれに服する組合との間における行政機関相互の一種の内部的手続にすぎず、これが訴訟事件の対象として取り上げるに足りる事件の成熟性ないし具体的事件性を欠くものであることは明らかであるというほかはない。

(請求原因に対する認否)

1 請求原因1の事実中、組合の本件事業の施行地区の面積が約四三万四〇〇〇平方メートルであるとの点を否認する。原告竹地、同松井、同土本末春が組合の組合員であるとの点は知らないが、その余の諸事実は認める。

2 同2の(一)の事実中、組合が当初本件事業を昭和四九年一二月三一日に完成することを目途としていたとの点を否認するが、その余の諸事実を認める。

同2の(二)の事実中、昭和四八年一〇月、土岐市から本件地区に下水道終末処理場を建設することについて被告に宛てて該事業の認可方申請が行われ、被告が同四九年三月これを認可したとの点を認めるが、その余の諸事実は否認する。

同2の(三)の事実中、本件事業の施行期間が昭和五五年三月二一日まで延長されたとの点は認めるが、その余の諸事実は知らない。

3 同3の(一)、(二)の事実中、昭和五三年一二月四日に開催された組合の第六回総代会において、その第二一号議案として本件地区における事業計画の変更が提案され、同議案が原告ら主張のとおりの多数決によつて可決・承認されたとの点は認めるが、その余の諸事実は知らない。

4 同4の(一)ないし(五)の各事業関係を否認し、その主張をすべて争う。

5 同5の事実関係自体は、こるを認めるが、その法律的主張はすべて争う。

三  被告の本案前の主張に対する原告らの反論

土地区画整理は、法の規定によりその計画の樹立・公告及びその実施という一連の行為が段階的に行われることによつて完結するものであつて、事業計画は、たしかに右一連の行為の一環をなすにすぎないものではある。しかし、事業計画が全体としての土地区画整理事業の根幹をなすものであることはとうてい否定し得ないところであつて、ひとたびこれが決定認可されると、法定の除外事由のない限り、そのまま該計画が実施され、爾後の手続が機械的に進められることの公算はきわめて大きい。そうであるとすれば、事業計画の決定、変更が違法であるにもかかわらず、その後の具体的又は最終的処分によつて利害関係人の具体的権利に変動が生ずる段階まで、当該利害関係人をして拱手黙視せしめることは、その出訴権に対する不当な制限となるばかりでなく、爾後の手続を有害無用な手続の積重ねに帰せしめることになるものといわねばならない。

しかも、すでに主張したところから明らかなように、本件決議の専らの目的は、土岐市が行う下水道終末処理場の建設を可能・容易ならしめることにあつて、本件決議に基づく事業計画の変更が認可されることにより、右下水道終末処理場の建設が促進されるという特別の行政効果を生ずるところに、右事業計画変更認可の特殊性がある。このように、本件認可の直接効果として、土岐市の行う本件地区における下水道終末処理場の建設が可能となり、かつこれが促進されることになるのであるから、右事業計画変更認可、下水道終末処理場建設という予定された一連の経過をたどつて、本件地区に近接して土地を所有しあるいは居住する原告らの人格権、環境権並びに所有権が侵害されることは明らかである。すなわち、下水道終末処理場の操作に伴う水質汚染・悪臭・騒音・振動などの公害の発生によつて、原告らが本件事業に期待した周辺生活環境の改善という環境利益が全面的に失われることになるばかりでなく、これによつて原告らの健康が損われ、あるいはその日常生活が著しく困難になるなどの人格権侵害の蓋然性もまたきわめて高いものがあるといわなければならない。しかも、このように、周辺における生活環境の改善という環境利益を享受できないまま所有土地の減歩負担を受けたことと、右下水道終末処理場の建設によつてその所有土地の地価が低落するに至るであろうことをも併せ考えると、原告らの被るべき経済的損失もまたきわめて大なるものがあるといわなければならないであろう。

以上の諸状況を実質的・総合的に考量すれば、本件認可が原告らに対する行政処分としての性質を有することは自ら明らかである。

第三証拠〈省略〉

理由

一  原告らの本件訴えの趣旨は、「被告が昭和五四年九月一七日にした、土岐口土地区画整理組合の事業計画変更認可処分を取り消す。」旨の判決を求めるというのである。

二  そこで、原告らの本件訴えの適否について検討してみると、土地区画整理事業が、法の定めるところに依拠して、その計画の決定・認可・公告及び実施など一連の諸過程が順次段階的に遂行されることによつてその完成をみるに至る一種の行政作用に当たることはいうまでもないところであるが、右一連の諸過程のうちの事業計画の決定ないしは変更とこれが認可という手続自体は、ひつきよう、単にその施行地区を特定し、当該整理事業の基礎的事項を一般的・抽象的に定めるにすぎないものである。したがつて、決定ないし変更された事業計画の認可という手続ないしは処分が特定の個人の権利関係に具体的な変動を及ぼすような本来の行政処分とは著しく趣きを異にするものであることはいうまでもないところであつて、事業計画が決定ないしは変更され、かつこれが認可されるということのみによつては、いまだ該計画にかかる事業遂行の故に利害関係人の権利関係にどのような変動を及ぼすかが具体的に確定されるに至らないことが明らかというべく、事業計画は、その認可の前後を問わず、これを比喩的に表現すれば、当該整理事業の青写真たるの性質を有するにすぎないものと解すべきである。このような事業計画の性質に徴すると、単なる事業計画の変更認可がそれ自体適法な抗告訴訟の対象たりうる行政処分に該当しないものであることはきわめて明らかであるといわざるを得ない。

なお、原告らは、本件における事業計画の変更は、専ら土岐市をして施工区域内に下水道終末処理場を建設することを可能ならしめることを目的とするものであつて、右事業計画の変更認可処分は、その処分が存在することによつて直ちに右下水道終末処理場の建設を可能ならしめ、かつこれを促進させるという行政効果を生ずるという点において、その特殊性があり、その結果、原告らの有する人格権、環境権及び所有権が侵害される旨主張する。しかしながら、原告ら主張のごとき下水道終末処理場が都市計画法並びにその他の関係諸法令の定めるところに従い所要の手続を経ることによつて初めて適法に建設されうるものであることはきわめて明らかというべく、本件事業計画の変更認可処分が存在するからといつて、そのことによる直接の効果として、右下水道終末処理場の建設が可能となり、かつこれが促進されるというがごとき法的根拠は全くこれを見い出し得ない。されば、原告らの右主張が失当であることは論を俟たないものというほかはない。

三  以上の次第であるから、原告らの権利関係に何らの具体的な変動ももたらすものではないことの明らかな本件事業計画の変更認可についてその取消しを求める原告らの本件訴えは、ひつきよう抗告訴訟の対象とはなり得ない事項を訴訟物とする取消訴訟(抗告訴訟)としての評価を免れず、もとより不適法な訴えであるというほかはない。

よつて、原告らの本件訴えを不適法として却下することとし、なお、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条・民事訴訟法八九条・九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 服部正明 熊田士朗 綿引万里子)

当事者目録、土地区画整理組合確定図〈省略〉

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